久しぶりに人生の哲学シリーズを書いてみます。
今回は12回目『商品を発意する』です。
私の周りの建ブロの皆様は発想力に秀でている方が多く、いつも感心させられます。
自分自身の過去を振り返ってみると、サラリーマン時代と独立後ではその気構えや行動スタンスが全く違っている事に気付きました。
サラリーマン時代は口ではとやかく言いつつもいつも受け身の立場で行動していたように思います。
上司からの命令に文句を言いながらただひたすら忠実に仕事をこなしていました。
それで毎月お給料がいただける身でしたので、すっかりそれに甘んじていたのだと思います。
現状景気は冷え込み、北海道は全国の中でも最悪の状況下にあります。
黙っていても何の進歩も変化もありません。特に建設業では淘汰の時代に突入しています。
この淘汰は建設業に限った事ではありません。どの業界にもあるごく当たり前に存在する競争原理の産物です。
厳しい時こそ知恵とその行動力が真価を発揮します。
私は独立後大阪に本社がある一部上場の電機メーカーさんとお取引をさせていただく機会を得ました。
このメーカーで製造されているある家電商品の工場を見学させていただいた時、私の想像を遙かに超えた努力が日々実行されている事を初めて知りました。
それは「見えない結果への挑戦」です。
私が見た家電新商品開発には、単純かつ地道なデータ収集が行われていました。
いつ判明するとも解らない研究期間は数年に及ぶこともあるそうです。スタッフ一同一丸となり目標達成に向かい昼夜努力されています。
しかし最悪の結果、目標に到達する事無く終焉を迎える商品開発もあるとお聞きし、研究開発の難しさや競争に勝つ抜くため課せられるエネルギーの大きさに驚愕しました。
出来上がった製品一つ一つに長年の苦労と開発者の思いが詰まっている事を消費者はほとんど知る由もありません。
さて、建設現場ではどうでしょうか。
通常請負工事の場合、その多くは「見える結果への挑戦」かと思います。
(現場代理人の裁量により結果は大きく違いますが・・・)
建設業界における、「新技術」 、「新工法」 、「新素材」 etc...の研究開発部門も「見えない結果への挑戦」にあたるのではないでしょうか。日々個々の現場で実施される創意工夫も十分新しいものへの挑戦です。
公共工事発注方式にも「性能規定発注方式」が登場する時代となりました。
どちらかといういと道内企業が不得手とする分野です。
私も現役時代、会社の上司に良く言われました。
「うちの規模でそんな研究や開発やったって無駄だ!・・・」
と、全く否定的でした。
今だから私は言わせていただきます。
それはあなた自身の尺度でしょ。
貴方はうちの会社がその程度だと勝手に決めつけていやしませんか?
確かに内容にもよりますが、中小零細でもできる研究や工夫は目の前に数多くあると思います。
重要なのは前向きな考えとやる気と適正な人材配置そしてそれを支援する経営者の存在に他なりません。
記事の最後にも登場しますが、経営の神様と言われた松下幸之助氏は数多くの名言を残されています。
ある日、人から
「おたくの会社何をする会社ですか」
と聞かれ
「うちは人を育てる会社です。そして電機製品も作っています」
と答えた話はあまりにも有名です。
そして次の名言も残されています。
とにかく、考えてみることである。
工夫してみることである。
そして、やってみることである。失敗すればやり直せばいい。
過去の私も含め現在建設業に従事されている方は何故にこの職業を選択されたのでしょうか。
それは単なる生活の糧としてでしょうか、それとも工事完成時の誇りと達成感を感じるためでしょうか。
少なからずそのような後者の理念を持つ技術者でありたいと私は思います。
そして、今後はそのような苦労を惜しまず日々努力されている企業こそ是非生き残っていただきたいものです。
業界は違いますが、あの経営の神様の「一日一話」は何度聞いても心に深く感ずるものがあります。
『商品を発意する』
商売をしている人は、その商品を買って使われる人の立場というものが一番よくわかります。ご需要家のみなさまが商品について日ごろ抱いておられるご不満、ご要望というものを聞く機会が一番多いのが商人でしょう。したがって、真にお客さまの要望にそった商売をするためには、そのご不満なりご要望を聞きっぱなしにするのでなく、それを自分で十分に咀嚼し、商人としての自分のアイデアを考え出す。いわば、みずから商品を発意してそれをメーカーに伝え、改善、開発をはかるよう強く要望していくことが大切だと思います。そこまでしてこそはじめて、真に社会に有益なほんとうの商売というものも可能になるのではないでしょうか。
出典:松下幸之助「一日一話」十月14日 PHP総合研究所。
最近のコメント